晴れのち曇り、夕方に小雨
6時に快晴の扇沢の市営無料駐車場に到着。平日のため駐車場はかなりの空きがあった。バスの切符売り場に7時前から並んだお蔭で先頭のバスに乗車。バスの車内では黒部ダム宣伝ビデオに見入る。ビデオの最後に黒部ダム展望台の案内があり、下ノ廊下を目指す人たちも展望台の方に行っていた。行きたい気持ちもあったが堪えてダム堰堤脇の登山口に出た。ここで支度を整えている間には誰もこの登山口に出てこなかった。
8時前に出発。ダムの下まで下り橋を渡ったところで家に携帯メールを入れる。この先は完全に連絡が付かない地帯となる。ここで漸く一人の登山者がダムの下の河原まで下ってきた。今日下ノ廊下を何人の登山者が目指すのか皆目検討が付かない。阿曽原温泉小屋に宿泊予約を入れたときは、宿泊者は63人とのことだったが。
歩き始めてまずは大タテガビンが目に付く。大タテガビンの名の由来はわからないが、黒部の魔神と呼ばれる黒部三大岩壁の一つだそうで頂上部分の三つコブがなんともユニークだ。
9時に内蔵助出会に着いた。内蔵助谷からはこれも黒部三大岩壁の一つ黒部の巨人と呼ばれる丸山東壁を見上げる。この先から黒部の渓谷らしさの険しさが続く。
別山谷出会の沢でロッジくろよん宿泊組に追いついくが、この場所で落石で負傷した登山者が休んでいたのだった。受傷者はヘルメットを被っていたが、落石が顔に当たったとのことだった。ヘルメットを被っていても落石から100%守られるわけではないが、ヘルメット無しでの落石の直撃を想定すると落石の恐れのある場所でのヘルメットはやはり必須だと思う。
鼻血の収まった受傷者のグループが出発したその後を付いていった。ここから先も黒部川と切り立った渓谷の絶景が続く。写真撮影のためそのグループに遅れては追いつくこと数回繰り返したのち先行させてもらった。
12時半に多くの登山者が休憩している十字峡広場に着いた。ここにはここから下る赤い矢印が2本ある。どちらにも行き先案内が無いのがよくない。よく見渡すと木々の間から吊橋が見えた矢印側が本ルートで、もう一方が十字峡へ下る矢印とわかった。十字峡の下りのルートにはロープがかけてあり十字峡の上の岩まで降りることができたが、滑り落ちてしまうと命はないかもと岩の縁までは怖くていけなかった。
十字峡吊橋で登山者が並んで待っている。ここから先、旧日電歩道の後半戦の半月峡からS字峡へと続く。水平な道と下っていく川、その高低差が次第に大きくなっていき、足元から見下ろす川底と両岸に迫る渓谷の迫力は凄いの一言につきる。
S字峡付近で先方に発電所の送電口が見え長かった旧日電歩道にも終わりに近づいた思うと正直ホッとした。
S字峡を過ぎた後大きく下って、14時過ぎに東谷吊橋を渡り旧日電歩道が終わった。長い行程で紅葉にはまだ早かったが、十字峡やS字峡など黒部渓谷の素晴らしさを満喫できて来て良かったとの思いのほかに、道を開いた先人たちや登山道整備に関わる人たちの苦労に感謝の思いも募った。
今日の行程はここで終わりではない。ダム堰堤から関電設備内の通路を過ぎてさらに一つの峠を越えたところに阿曽原温泉小屋がある。この権現峠の登りがとてもきつく、小雨まで降り始めてしまった。幸い樹林の中だったので雨具を出さずに歩き続けて阿曽原温泉小屋に15時半に着くことができた。
休憩や写真撮影時間を入れてほぼ標準コースタイムで来ることが出来た。最終日の仙人温泉小屋から黒部ダムまでの行程で予定通り朝5時半に出発すれば17時に黒部ダムに到着できる目途は立った。
目当ての露天風呂で汗を流す。疲れた体に心地よい温泉だった。この日は二人に一枚の布団の割り当てで当方が入浴している間に布団の割り当てが決まっていた。小生の割り当ては大部屋の真ん中の通路で両サイドから寝た人の足が迫るという狭い場所だがでも一枚の布団が割り当てられていた。残り物に福ありだった。