早朝曇りのち稜線上は小雪、下山後は曇り
5時に起床。空に星は見えないがガスがかかっている様子はなかった。気温は氷点下で寒いことには変わりはないが、放射冷却による強い冷え込みではなく、まずまずの天気だと思った。ただ腕時計の気圧計は夜間に気圧が徐々に下がっていっていることを表示していた。気圧低下は一般的に天気が崩れる予兆だが、昨夕の天気状態などで正バイアスが掛かっていたのか天気は持つと思い込んでレインウエアはザックに仕舞うなど支度を進めた。
朝食を終えた6時前に明るくなった小屋傍のピークに立った。目の前に聳える塩見岳、左の稜線の先には濃鳥岳から間ノ岳、北岳、甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳、右には荒川三山と南アルプスの名峰が連なる大パノラマに感動! 間ノ岳や濃鳥岳、荒川三山に雪は着いているが、幸運なことに塩見岳には北俣分岐方面に少し見えるも登頂に支障となるような雪は見えなかった。この時南西にある大沢岳を隠す雲に気づいたが、ここでも天候悪化は考えなかった。小屋番さんは塩見岳往復には荷物は小屋に残してよいと話してくれていたが、北俣岳まで行くつもりで全ての荷物を整えた。
塩見小屋を6時20分に出発した。稜線上の登山道では冷たく強い風が吹き、南の荒川三山には流れる雲がかかり始めていた。天狗岩に着いたときには荒川三山の頂上は雲に隠れており、雲は物凄い速度で近づいていた。
7時15分に塩見岳西峰に到着と同時にガスがかかって間ノ岳方面のパノラマも隠してしまった。東峰へも行ったがガスで見晴らしもないので北俣分岐方面へ行くことは諦めて西峰に戻った。このころは雪ではなく気中の水分が凍ったような細かな霰が降っていた。レインウエアに着替えてハイドレーションの水を飲もうとして水が出てこない。露出していたホースが凍り付いていたのだった。テント泊装備での縦走や大雪渓の登下降でハイドレーションを重用し、九州の冬の低山登山でも使用していたが、ホース凍結は初めての経験だった。以降手袋をしたままではあるが、凍ったホースを握って下った。塩見小屋近くまで戻ってきて凍った所が融けて水が飲めた。この時は既に塩見岳は完全にガスに覆われていた。
8時半前に塩見小屋に到着。小屋の前で家に下山の連絡メールを送信しようとして携帯のバッテリーがほぼ空っぽ。10年以上使用しているガラ携、当時低温時はバッテリーの消耗が激しいので冬山では電源を切っておく習慣があったことを思い出した。予備のバッテリーを携行してはいるが、ホースの凍結といい10月の3000m峰での低温対応への配慮が足りなかったことに苦笑いで済んで良かった。
11時過ぎに三伏峠小屋に着いて食事休憩とした。ここで塩見小屋に宿泊した6人が一時的ではあるが居合わせた。皆寄り道することなく下山まっしぐらでこの場所で休憩というのもこの天候の悪さが故だ。
下山中雨は止むことはなかった。13時過ぎに登山口に、14時前にゲート口駐車場について塩見岳登山を無事に終えた。旅館には予定よりも2時間以上も早い15時にチャックイン。すぐに温泉で汗を流し、食事の後に2回目の温泉にゆっくりと浸かって疲れを取ることが出来た。