雨のち曇り(日没前に晴れ)
朝4時、雨が降り続いている。携帯の雨雲レーダーでも中部南岸沿いで雨になっており当面止みそうにない。稜線上での見晴らしはないと判断して烏帽子岳は諦めて出発は遅らせて鳥倉林道ゲート口を目指して車を走らせた。途中の林道では凄い濃霧に遭遇。車のライトが反射して数メートル先がよく見えず林道の真ん中をゆっくりと走った。下山してくる車2台とすれ違ったが、見晴らしのきく場所だったのが幸いだった。
7時前に林道ゲート口に到着。冷たい雨が降り続けていて登山を諦めて車で帰る人もいたが、小屋予約もありとにかく塩見小屋までは行く決意は変わらなかった。
7時45分に出発、雨の中の林道歩きだが、谷間の深い景色にこれから登る山への緊張感が高まった。
8時半に林道から登山道に入って暫らくはきつい登りが続いたが、左に折れてからはそれほどでもなく、雨は少し小降りになったようで歩行にも支障は無い。
9時半前に豊口山間のコルを過ぎ最初の丸太桟道に着いた。この日は稜線に出てもカメラの出番はなさそうなのでこの先に続く丸太桟道を写真に撮った。このころより下山してくる登山者とすれ違ったが、挨拶を交わすだけで山の状況を言ってくれないしこちらも聞けなかった。途中に台風の所為か直近に倒れたような木が登山道を塞いでいた。木の枝は見事に切り払われ逆に手がかり足がかりとなる所がない。慎重に越そうとしたんだけれど滑って落ちてしまったが、背中のザックのお蔭でどこもいためることは無かった。
11時に無人の三伏峠小屋を通過し稜線歩きとなるが、雨で所々でぬかるんでいて歩き辛い。
12時を過ぎ本谷山への登りでシャリバテのため、登山道脇に座り込んで昼食休憩。このころには雨はほぼ止んでいたが、ガスで景色が無いのには変わりは無かった。
本谷山を過ぎて登山道に登山者を元気付ける看板が設置してあった。看板は地元の言葉で書かれていてユニークで面白いと思った。 『小屋はじきかやぁ いんね あと 40分だに』の看板が出てからの最後の登りはきつく、ハイマツ越しから塩見小屋が見えたときはホッとした。
14時15分に塩見小屋に到着。雨は止んでいたがガスで景色は全くない。小屋番さんによると今朝の山頂には雪があり、ツアー登山グループはガイドの判断で山頂直下の急峻な岩場で引き返したという。明日も雪があれば山頂へは十分に注意して欲しいとアドバイスがあった。軽アイゼンは車に置いてきたし、山頂の積雪状態はガスで確認でず明日の登頂が心配された。以降ちょくちょく小屋の外に出てはみるが、ガスは一瞬晴れそうになってもまた直ぐにガスで覆われてしまい山頂の状態は分からないまま時間は過ぎた。ところが日没の直前になってガスが急速に取れて目の前に塩見岳が現れた。ガスの中から浮かび上がってくるようなピラミダルな塩見岳に感動した。空は晴れてくるし山頂にも雪はない。丁度小屋の夕食時間となったので小屋に引き上げた。
塩見小屋では携帯電話のブースターが設置してあり携帯電話が繋がる。家への連絡で北九州は二日続きの秋晴れだと知った。天気は西から進んでくるし、夕方の晴天がこのまま続きそうな予感に明日の山行時間を確認した。5時半からの朝食を頼んだため出発が6時半になったとしても、今日のペースで歩けば1時間の遅れは十分にカバーできる範囲と見込むと明日の登頂が楽しみになった。
塩見小屋営業最終日のこの日にはキャンセルも出たようだが宿泊客は6人。その中に障害のある子とご両親の3人がいた。ガスが晴れて全員で塩見岳を見たあとでお父さんとお話できた。障害がありながらも山登りを嫌がらないでついてくる子供にご両親は百名山を目標にして二人の休暇をやりくりしながら山登りを続けられているという。ご両親のサポートは大変なことだと分かるし、立派だと思う。自分はこの子への接し方が分からず声を掛けてあげることは出来なかったが、親子三人の百名山達成を心から応援したい。