2012年北アルプス山行記録−後立山連峰縦走(穂高連峰登山はこちら

1.後立山連峰縦走記録(山行計画はこちら
7月22日
猿倉
→白馬尻
23日
白馬尻
→頂上宿舎
24日
白馬鑓ヶ岳
→唐松岳
25日
五竜岳→
キレット小屋
26日
鹿島槍ケ岳
→種池
27日
針ノ木岳
→針ノ木峠
28日
蓮華岳
→扇沢
29日
アルプス展望広場
7月21日(土)

北九州出発

松川村道の駅
 朝北九州市を出発、高速を安曇野インターまでETC休日半額割引で走行。渋滞が無く時間的に余裕があったので、蝶ヶ岳登山口手前のほりでーゆ四季の郷で入浴後、松川村の道の駅で車中泊。以前、北九州から大町市まで走行した際途中の渋滞で予約した民宿の夕食時間に間に合わず、気は焦るし民宿にもご迷惑を掛けたことがあり、マイカー移動の車中泊はお気楽な旅です。

7月22日(日)
曇り

松川村道の駅

扇沢駐車場

JR信濃大町駅

JR白馬駅

猿倉

白馬尻幕営地
 曇っているが清々しい信州の朝、九州の熱帯夜と違ってやはり冷え込む。出発前ふと車のタイヤに虫が止まっているのに気づく。りっぱなノコギリクワガタ、捕まえて近くの木に放すも力なく茂みの中に落ちてしまう。おそらく夜の冷え込みで温かいタイヤに停まったもののその後の冷えで活動が鈍っているのか?日が高くなり気温が上がれば元気に動き出すのでしょう。
    
   タイヤに停まったノコギリクワガタ

 大町市のスーパー朝7時から営業を始めており、早速行動食用のパンを買い込んで、早いとは思ったけれど車を置いておく扇沢の駐車場に行った。扇沢の駐車場、3年前は3段ある舗装駐車場の3段目が無料だったんだけれど3段とも有料になっており、無料はその下の未舗装の駐車場のみ、そこにあと残り4,5台というところで入ることができた。早く着いたお蔭でした。
 ゆっくりと出発の準備をしているとあとから来たテント泊登山者のパッキングが目に留まった。ザックのサイドポケットにウレタンマットを入れて固定している。これだと思った。エアマットレスがパンクで修理も効かず、今回初めて携行するウレタンマット、当初ウレタンマットはザックの上にくくりつけておくつもり、ただ雨のときにビニル袋でうまく防水できるか不安だった。ザックのサイドポケットに入れて固定してしまえば安定性は高いし、雨のときはザックカバーで覆ってしまえばよい。バスまでの時間がかなりあり、ゆっくりとパッキングをしなおしていざ出発!これも早く着いたお蔭でした。
  
   扇沢の無料駐車場

 扇沢からバスで信濃大町駅まで下り、JR大糸線で白馬駅へ、そこからバスで猿倉に予定通り12時過ぎに着いた。ゆっくりと昼食を摂り、水を満タン3L給水し、登山届けを提出して13時前に最初の幕営地の白馬尻に向けて出発。この時のザックの重さは約23kg、標準コースタイム以内を目標に、ダブルストックで気合を入れて歩いた。ほぼ1時間でキヌガサソウやサンカヨウの咲く白馬尻小屋に到着。
 白馬尻のテント場は小屋の前の広場。到着時は一張りも無くのんびりしていると高校山岳部の団体が到着し賑やかにテントを張り始めた。小屋番さんから『この下の白馬尻荘跡にテントを張ってもいいですよ。』と助言があった。白馬尻荘跡?行って見ると小石が散乱しているがコンクリートの基礎があり、数年前まで山小屋があった所だった。3年前に小蓮華山から白馬尻を眺めたとき、この場所が何なのかわからないでいたがその疑問が解けた。この白馬尻荘跡の平らな箇所にテントを張り、縦走初日の夜を静かに過ごすことが出来た。

    
  小蓮華山山頂から赤丸部が白馬尻(2009年10月23日) 
  右の写真は赤丸部拡大 左:テントを張った白馬尻荘跡、右:白馬尻小屋冬期撤去

 この縦走で出会った高山植物たち ( )内は撮影日です。
 花名特定には 高山の花 久保田修著 滑w習研究社を参考にしています。

キヌガサソウ(7/22)

キヌガサソウ(7/23)

キヌガサソウ(7/23)
7月23日(月)
曇り

白馬尻

白馬岳幕営地

白馬岳

三国境

白馬岳

白馬岳幕営地
 5時起床。白馬岳方面はガスが出ているようだが、小蓮華山はきれいに見えるほど晴れている。パンとソーセージとコーヒーで朝食を済ませテント撤収。
 6時過ぎに出発。大雪渓取付き点までキヌガサソウの群落が続く。このキヌガサソウ、花弁の数が6枚から11枚のものまであった。同じ種類でこれほどの違いに驚く。(ネットで調べるとこれは萼片で葉の数に一致する傾向があるとのことだが、これだけの数の違いは何に起因するのか、単なる個体差なのでしょうか?)
  
   朝、白馬尻荘跡から見上げた白馬岳から小蓮華山方面

 6時半過ぎに大雪渓に取り付く。最初はアイゼンなしのダブルストックで登り、途中でアイゼンを装着して気合を入れて登るも大雪渓半ばの急傾斜を過ぎたあたりで息切れ、やはり背中のザックの重さが堪える。3年前には白馬尻にカメラケースを忘れて引き返し雪渓を2度登ったが、テントが無かった分、やはり今回の方がきつい。途中ストックに体を預けるように休憩を取りながらも約2時間で葱平に着いた。ここからはシナノキンバイ、ハクサンイチゲ、ウルップソウ、ミヤマオダマキなどのお花畑、高山植物の写真撮影を兼ねた休憩を入れながらゆっくり登った。
 10時半に頂上宿舎に到着。テント受付は12時からということで、翌日の朝食だけを申し込んでテント設営。テント場は白馬尻から登った高校生たちで半分ほど埋まっていた。テント受付時間まで高校生たちのテント設営や昼食準備などの振る舞いを見ながらのんびりと過ごした。
  
   白馬岳頂上宿舎のテント場、夕方にはテント場は満杯

 12時半過ぎにテント受付を済ませサブザックに行動食などを詰込んで白馬山荘へ、ここで夕食のみを申し込みスカイプラザ白馬で昼食後山頂へ。白馬岳山頂は高校生や中学生の学校登山で賑わっており、そこそこに三国境に向かって下った。
    
   中高生で賑わう白馬岳山頂、山頂付近は生憎のガスのなか

 登山道は砂礫続きで高山植物は南側に比べて少ないが、イワベンケイやミヤマダイコンソウなどの群落が目を楽しませてくれる。三国境付近ではコマクサの群落、そのピンクのきれいな色は高山植物の女王に相応しい可憐さだが、地下には1mもの根を張っているという。地表の可憐さに比べ地下のその逞しさが高山の砂礫地で生きていく術だ。
 三国境に着いたのが15時、テント設営後1時間以上ものんびりしたことが悔やまれる。小蓮華山往復は1時間、急げば山荘の夕食時間までに戻れるが、周囲の山はガスが掛かっており展望は望めそうに無いためここで引き返した。
  
   三国境付近から見た小蓮華山

 夕食を白馬山荘でいただきテントまで下って早々に横になった。19時半を過ぎたとき、高校生のリーダーが消灯を呼びかけながらテントの間を回っている。お蔭で周りのテントからの話し声も消え静かになったんだけれども、食後にテントで飲んだコーヒーの所為か22時過ぎまで寝付けなかった。


サンカヨウ(7/22)

ハクサンイチゲ(7/23)

ベニバナイチゴ(7/23)

ミヤマクワガタ(7/23)

ウルップソウ(7/23)

クジャクチョウ(7/23)

ミヤマオダマキ(7/23)

ムシトリスミレ(7/23)

オヤマノエンドウ(7/24)

イブキジャコウソウ(7/23)

コマクサ(7/23)

コイワカガミ(7/26)

イワベンケイ(7/23)

ショウジョウバカマ(7/26)

ハクサンフウロ(7/27)
7月24(火)
曇り

白馬岳幕営地

白馬鑓ヶ岳

不帰の剣

唐松岳幕営地

 朝というか夜中2時半過ぎテントの外の足音で目が覚めた。どうやら高校生が朝食の自炊を始めたようだ。これが山の生活、昨晩19時半の消灯も頷ける。早すぎるので暫く横になっていると周りのテントも動き始めたが、空は雲に覆われており白馬岳でのご来光も無理なので横になったまま過ごした。小屋の朝食に間に合うように明るくなってからテントを撤収したのだが、小屋朝食は時間制約を受けるので以降小屋朝食は取らないことにした。
 6時半に霧雨の中を出発。雨は直ぐに止んだが、周囲の山頂はいずれもガスの中。杓子岳は巻き道を通って白馬鑓ヶ岳へ向かうが、目標となる山頂は見えず登りの足取りは重い。8時半前に鑓ヶ岳山頂に到着、濃いガスで周囲は何も見えないのだが、疲れのため暫し休憩後下る。天狗山荘に向けては、クモマスミレやチングルマ、コマクサ、ウルップソウなどの花々が見られた。
  
   杓子岳巻き道から見た白馬鑓ヶ岳から白馬岳方面、山頂はガスの中

 天狗山荘に着いたのは9時半、写真撮影や大きな雪渓のトラバースがあったとはいえ、鑓ヶ岳からの下りでコースタイムの倍の時間がかかっていたので長い休憩は取らずにガスのかかる天狗の頭へ向かう。天狗の頭から天狗の大下りが直ぐに始まると思っていたが、大下りの下降点はなだらかな稜線を30分ほど行った先だった。この間ガスで唐松岳方面の視界はなかった。ここでストックとカメラをザックに仕舞い不帰キレットに向かってざれた急斜面をガスの中へ下っていった。
    
  左:天狗山荘付近に残る雪渓、左上の雪渓上の黒い点二つは登山者
  右:天狗の大下り取り付き、左端に下降する登山者、その先はガスの中

 不帰キレットには11時過ぎに到着。ここで大休止とした。休憩中に唐松岳方面のガスが切れた瞬間に、初めてこれから向かう山が見えた。カメラの望遠で山頂に数人の登山者が立つのが唐松岳と判った。内心『あんなところまで』という思いであった。
    
  左:キレットから天狗の大下りを振り返る
  右:キレットから見た不帰の剣、左端からT峰、U峰北峰、南峰、唐松岳

 12時前に出発、僅かに下ってT峰に登り始めたところで、ヨウラクツツジが咲いていた。ここで不帰キレットで一緒になった男性登山者に先に行ってもらい、カメラを取り出して撮影。その上の岩場にはコケモモ、結局カメラは首にぶら下げて登った。T峰は難なく通過、T峰の下りからはU峰の岩壁に取り付いている登山者が見えた。これが不帰の剣の最難所、長い鎖の連続、鎖は補助的というより鎖を頼りに腕力で攀じ登っていった。
   
   T峰の下りから見たU峰、赤丸の位置に登山者、右がその拡大写真
   (このテント泊登山者とはこの先冷池まで付かず離れずの同行?縦走)
   
 13時半にU峰北峰に到着、核心部を通過した安堵感で暫く休憩後、ガスで見えないV峰と唐松岳に向かって先へ進んだ。U峰北峰から僅かに下って登り返したピークに山頂標識が。『V峰に着いた?』そんな訳はない、U峰の南峰で、ここからまた下ってざれた道を登り返して約1時間、V峰がどこか分からないままガスの中から登山者の立つ唐松岳が見えた。
    
   左:登山路にかかる鉄の橋  右:U峰北峰から先の目標はまたガスの中

 15時前に唐松岳山頂に到着、目標時間内に着くことができた。山頂で縦走者とそれぞれを労う。U峰北峰で当方を抜いていった若い登山者、早朝に猿倉を出発したそうで、今日は唐松岳でテン泊し明日は一気に鹿島槍を越え赤岩尾根を下るという凄い脚力、それ以上に感心したのはヘルメットにザックにはピッケルの装備、険しい岩稜の登下降にはヘルメットは必要と思った。
 唐松岳テント場は山荘からかなり下った場所、トイレは山荘内のトイレを使用できるが不便、またテン泊者への夕食提供はなくこの日は山荘でビールにつまみ、テントでラーメンで終わった。
  
   唐松岳キャンプ地への下りから見た五竜、立山方面


タカネシオガマ(7/24)

ミヤマシオガマ(7/23)

ヨツバシオガマ(7/23)

テガタチドリ(7/23)

ハクサンチドリ(7/27)

チシマギキョウ(7/25)

ミヤマキスミレ(7/23)

クモマスミレ(7/25)

キバナノコマノツメ(7/27)

オオバミゾホオズキ(7/23)

ヤマブキショウマ(7/25)

ウラジロタデ(7/25)
7月25日(水)
曇り

唐松岳幕営地

牛首

五竜岳

キレット小屋
 前夜の睡眠不足と縦走疲れで熟睡、明るくなって目が覚めた。急いでラーメンを食べテント撤収し山荘まで上がるが、出発時間が小屋泊者と重なりトイレで行列、6時半を過ぎての出発となった。
 牛首からはいきなり鎖場の下降から始まった。この日も目指す五竜岳は雲の中、雨がないだけましと思いつつ下る。この稜線上では、ゴゼンタチバナやヤマブキショウマ、ハクサンシャクナゲなどの花が見られた。
  
   牛首の岩稜を下る登山者、目指す五竜岳は雲の中

 白岳への登りのころより雲の色が濃くなり、五竜山荘に着いたときにはついに小雨が降り出した。休憩も兼ねて止むのを待ったが、レインウエアを着て9時半に出発した。五竜岳には3年前に空身で登っているが、その時もこんな天気であったことを思い出した。雨は程なくして止み途中からストックをザックに仕舞い鎖場を登っていく。不帰の剣のことを思えばなんてことは無いはずなのに、思うように足が進まず休みながら登っていく。
 10時半すぎに縦走路と五竜岳山頂への分岐に到着しここで大休止。レインウエアを畳み行動食を取っていると団体さんが山頂へ、その一行が下ってくるのを待って山頂に立った。3年前はガスで何も見えなかったことを思えばましだが、またしても鹿島槍ケ岳の雄姿を見ることは出来なかった。分岐まで下ったところでテン泊縦走者が出発の準備を終え地図を見ていたので、見せてもらってキレット小屋まで4時間のコースタイムにあ然。3時間と思い込んでゆっくりし過ぎてしまった。急いで準備を整え11時半に五竜岳を後にした。
  
   五竜岳山頂にて唐松岳から鹿島槍ケ岳方面、生憎いずれも雲の中

 五竜岳からの急なザレ場や鎖場を大きく下り、アップダウンを繰り返しながら先に進んで、どこがG4やG5か判らないまま13時半過ぎに標識のある北尾根の頭に到着した。
(下の写真は下山中に撮影した写真を後日地図とつき合わせて特定したもの)
  >  
   左:五竜岳下山路から見たG4、G5、北尾根の頭  右:G4側から見たG5

    
   左:北尾根の頭側から見たG5、左に五竜岳  右:G5を下る登山者(ズーム)

 14時過ぎに口の沢のコルに到着し小休止。ここでハイドレーションの欠点に気づくと言うか、給水タンクが空っぽ、残量が分からないので調子よく飲んでいるとこうなってしまう。幸いこの先キレット小屋までは1時間半しかなく日差しも無いので脱水状態になることは無かったが、以降は中継山小屋があればそこでの給水確認や出発時に調理水用ペットボトルに500mlぐらいは入れて出発することとした。
 15時半にキレット小屋に到着し宿泊と夕食を申し込むが小屋番さんから一言、『五竜山荘でこの小屋の宿泊申し込みができると張り紙があったはずですが、五竜山荘での宿泊情報は無線で連絡がきます。小さな山小屋なので事前の連絡をお願いします。』と、ごもっともです。五竜山荘では小雨で登山者が多く中に入らなかった。宿泊する小屋なら申し込み時に確実に登山情報は入るが、途中の小屋でも小屋に着いたらその先の登山情報を取り込むことは重要でそれを怠ってしまった。
 夕食後小屋の外が賑わっていた。雲が取れ鹿島槍ケ岳が夕陽に染まり、明日の天気が期待できた。
    
   左:夕陽に染まる鹿島槍ヶ岳 右:毛勝山に沈む夕陽、左は剱岳


タイツリオウギ(7/25)

イワオウギ(7/24)
エゾシオガマ(7/27)

アオノツガザクラ(7/23)

コケモモ(7/24)

アカモノ(7/24)

ウラジロヨウラク(7/24)

タカネバラ(7/26)

ハクサンシャクナゲ(7/25)
7月26日(木)
快晴

キレット小屋

八峰キレット

鹿島槍ケ岳

爺ヶ岳

種池山荘幕営地

パノラマ写真
 鹿島槍ケ岳北峰
 布引山
 爺ヶ岳南峰
 鹿島槍ケ岳との相性が良いのか3年前にキレット小屋に泊まった時と同じように早朝から快晴。この日は種池までなのでゆっくりと準備をし出発したのは6時過ぎ、この日の宿泊者の最後の出発になってしまった。出発して直ぐに鉄梯子を上って八峰キレットに取り掛かる。梯子に鎖、岩壁のトラバースと気を抜けない場所だが、距離は短く北峰への急な登りに続く。キレットで女性ソロや団体さんに追いついてゆっくりしたペースで登っていたんだけれど、急な登りを前に『お先にどうぞ』と不本意ながら先行することになった。
 7時半に吊尾根の分岐に到着。ザックをデポして空身で北峰に登った。登山者が居なくなるのを待ってパノラマ用写真を撮影。北峰からは南峰の形が美しい。
  
   吊尾根分岐にて、正面の鹿島槍ヶ岳南峰の姿が美しい

 8時半に鹿島槍ケ岳南峰に到着。ここで縦走出発点の遠く白馬岳から最終目的地の針ノ木岳や蓮華岳までが見渡せた。我ながら良くここまで来れたと感心すると共に目標を捉えたことで縦走完遂へのモチベーションもあがる。ここでも登山者が下山するのを待って写真を取り、9時過ぎよりゆっくりと下山をはじめた。布引山でも写真を撮り、更に下った冷池山荘手前にはシナノキンバイやミヤマキンバイ、チングルマなどのお花畑が見事だった。
  
    鹿島槍ケ岳南峰にて、歩いてきた白馬岳方面

  
    鹿島槍ケ岳山頂から目指す針ノ木岳方面

 11時に冷池山荘に到着。ここで不帰の剣より付かず離れず縦走してきた登山者が種池から扇沢に下山するので見送った。初めての縦走路で同じ方向を目指したテントを背負った登山者がいて、一緒になって歩いたわけではないが自分の歩行ペースの確認ができ、またテン場や休憩場所で会話するなど少なからず精神的にゆとりが持てたと思う。
 冷池山荘で昼食にカレーを注文した時に今日の目的地を聞かれ、『種池山荘は学校登山が入っており大変な混雑が予想され、できれば種池山荘を避けて欲しい』と言われた。自分はテントなので予定通りに種池に向かうが、高齢の男性登山者はここで停滞すると話していた。もし自分が小屋泊でこの時間にこの情報を得たら、気合を入れて新越山荘へ急ぐんだろうなと3年前にこの冷池山荘からキレット小屋まで足を伸ばしたことを思い出した。
 12時過ぎに山荘を出発、赤岩尾根分岐付近にはタカネバラがきれいに咲いていた。この分岐から爺ヶ岳へのなんでもない登りがとてもきつく、『背中の荷物はもう20kg以下で軽くなっているんだ』と自分に言い聞かせながら登った。爺ヶ岳では中峰はパスしたが南峰に登り写真を撮った。
 南峰から種池に向けて下っていると蟻の行列のように見える一行、登ってきたのは地元大町市の中学生たちだった。これだけの人数であれば小屋が混むわけだ。
  
   爺ヶ岳を登ってくる中学生の一団

 15時前に種池山荘に到着、テント設営と夕食を申し込む。テント場は縦走路を棒小屋乗越側に少し行った木立の中でとてもきれいに整地されており、まだ暑い日差しを避けた木の影にテントを張ることができた。
 山荘前でビールを飲んでいると中学生の一行が下山してきた。男子生徒が、毎日見上げている山だけど初めての登山と礼儀正しく明るく話してくれた。夏山の最盛期に学校登山を受け入れることは山小屋にとっても大変なことだろうが続けて欲しいと思う。


タカネヤハズハハコ(7/23)

ヤマハハコ(7/27)

ウスユキソウ(7/24)

シナノキンバイ(7/23)

ミヤマキンバイ(7/26)

ミヤマダイコンソウ(7/23)

ミヤマキンポウゲ(7/26)

ミヤマアキノキリンソウ(7/25)

ウサギギク(7/25)

ミヤマタンポポ(7/23)

ハナニガナ(7/27)

ミヤマアズマギク(7/24)
7月27日(金)
快晴

種池山荘幕営地

岩小屋沢岳

鳴沢岳

赤沢岳

スバリ岳

針ノ木岳

針ノ木峠幕営地

パノラマ写真
 鳴沢岳
 赤沢岳
 いよいよ縦走は最後の日、快晴のとても気持ちのいい朝を迎えた。6時過ぎに山荘を出発、テント場から棒小屋乗越、岩小屋沢岳にかけてたくさんの花が咲いていた。3年前の縦走時棒小屋乗越付近でシラネアオイの群落がきれいで注意していたんだけれどシラネアオイを見ることはできなかった。3年前に比べて10日ほど遅く花期が終わってしまったのかなと思うと残念。
 7時半に岩小屋沢岳山頂に到着、ここから針ノ木岳にかけての縦走は剱立山連峰を右に見ながらの気持ちよい稜線歩きが楽しめた。
  
   岩小屋沢岳山頂にて左に立山連峰、剱岳、右に後立山連峰

 新越乗越付近では針ノ木峠に消え槍と呼ばれる槍ヶ岳の穂先が見えた。その針ノ木峠の雪渓は3年前に比べて10日ほど遅いためか上部で雪解けが進んでいるようだ。
    
   左:新越乗越付近からの蓮華岳から針ノ木岳にかけての山並み
   右:針ノ木雪渓は雪解けが進んでいる模様。針ノ木峠に消え槍

 9時半に鳴沢岳山頂、11時前に赤沢岳に到着、それぞれの山でパノラマ用の写真を撮影。ただ赤沢岳への登りから歩行ペースが落ちていた。赤沢岳で大休止としたかったが、夏の日差しを遮る影がない。影を求めて赤沢岳からの足場の悪い道を下った。結局鞍部を過ぎてスバリ岳への登りにあった大きな岩の陰で昼食となった。ここで上半身裸で30分以上過ごしたが、誰も通過していかなかった。針ノ木からの縦走者は既に鳴沢岳から赤沢岳ですれ違ったし、途中で追い越した針ノ木を目指す人たちも昼食休憩の時間帯だと考えれば誰も通らないのも納得。
 スバリ岳へ登りから道はザレてくる。3年前に針ノ木岳やスバリ岳のザレ道を慎重に下ったのを思い出した。このころより扇沢側から立ち昇るガスが空を覆うようになった。
 13時半にスバリ岳、14時半に針ノ木岳に着くがガスのため展望は立山方面のみでパノラマ写真に適さず先を急ぎ、15時過ぎに針ノ木峠に無事に着いた。
 針ノ木峠のテント場は小屋から針ノ木岳側に僅かに登った稜線上から南側にかけての斜面にある。稜線上の縦走路の傍にテントを張ったが、縦走路の反対側には大きな雪渓が残っている。小屋で買った缶ビールをこの雪渓で冷やしておいてテントでゆっくり飲めば美味しいだろうなと後で気づいた。
  
    針ノ木峠でのテント場、大きな雪渓が残る

 19時ごろほぼ暗い中、小屋のほうからヘッドランプをつけロープを肩にかけた重装備の男性が登ってきた。団体登山者が針ノ木岳からまだ下ってきてないので迎えにいくという山岳監視員だった。針ノ木岳からの下りには雪渓のトラバースもあったし山に慣れていないメンバーがいたら暗闇の中大変だろう。暫くしてヘッドランプの行列が見え、全員無事に下山してきた。下山時間がこんなに遅くなったのはメンバーの体調不良などで時間管理が出来なくなったんだろうけど、団体登山のリーダーも大変だ。


イワツメクサ(7/23)

タカネツメクサ(7/23)

シコタンソウ(7/25)

ミツバオウレン(7/27)

ゴゼンタチバナ(7/25)

ツマトリソウ(7/27)

カラマツソウ(7/27)

チングルマ(7/26)

クルマユリ(7/27)
7月28日(土)
晴れ

針ノ木峠幕営地

蓮華岳

針ノ木峠幕営地

扇沢駐車場

薬師の湯

松川村道の駅
 縦走最後の朝、雲は多いながら晴れている。この日は、蓮華岳を往復しテント撤収後小屋で昼食後雪渓を下る予定。軽い食事を済ませて7時過ぎに出発、時間メモ代わりに針ノ木小屋の写真を撮ろうとしたとき、カメラのスイッチ切り忘れで電池切れ。昨日針ノ木峠で最後に撮った時には2個目のバッテリーの2/3は残っていたのに。。。このカメラ、既に調子が悪く、オートでは白黒画像でしか撮れずカスタムモードでは問題なく撮れていたので使い続けていたんだけれど、どうやら故障の影響がパワーセーブ機能にも及んでいたのかもしれない。山行前に修理しなかったことが悔やまれるが、高山植物は撮ったし、頂上付近はガスでパノラマ撮影は無理だろう。もう撮るものはないと思い直して山頂に向かった。
 ところが、山頂付近から北葛岳への下りにかけてあたり一面コマクサだらけ、コマクサの見事な群落を写真に収めることが出来なかった。3年前に来たときの状態はコマクサが咲いていたというイメージしか残ってなく、キレット小屋でここを目指していた同宿者にうそを言ってしまったようで反省。
 ただ群生と言っても、春のレンゲの田んぼのように花でピンクに染まるというものではなく、それぞれの株は距離を置いている。なぜもっと密生しないのか?ザレ場に育つコマクサはこの条件の悪い環境で育ちうる仲間の数が判っているのだろう。

 9時すぎにテント場に帰ってきてテントの撤収を始めた時、今朝扇沢から登ってきた人が今日のテントを張り始めた。梅雨明け後もすっきりとした夏空がなかったなか、一昨日からの夏空にこの週末の混雑を予想して仮眠もそこそこに登ってきたと言う。
 小屋の軽食が始まる10時に下山支度で小屋に降りて、小屋の前の多くの登山者とずらりと並んだザックに驚いた。小屋の受付には多くの人が並んで、小屋番さん達が慌ただしく対応していた。自分は軽食の針ノ木ラーメンを注文したがこの忙しさに準備が整ってなく、それでもカレーライスをだしていただけた。
 食事後下山を始めるが、登ってくる登山者の列が続く。テントを背負っている人も多い。この日は小屋泊、テント泊共に大混雑するんだろうが、ここには、針ノ木岳からの立山方面の展望、登山口扇沢の交通の便にこの時期ならではの大雪渓と蓮華岳のコマクサの魅力が登山者を引きつけている。
 雪渓を下り終えたところでアイゼンをはずし谷川の水を汲んで飲んだ。雪解けの冷たい最高に美味しい水だった。
 15時過ぎに無事に扇沢の駐車場に到着し、後立山連峰の縦走が終わった。一週間前にこの駐車場を出発したのが遠い昔のようだった。

 扇沢からの帰り道、薬師の湯で汗を流した。空腹時とはいえ体重は一週間で6kgも減っていた。ということはザックの中の行動食も減った分、下山のころは出発時よりもトータル10kg近く軽かったことになるが、脚の負担が軽くなったとは最後まで感じなかった。
 この日は宿に泊まりたかったがどこも混んでいそうで、この日もまた松川村の道の駅で車中泊した。

7月29日(日)
晴れ時々曇り

松川村道の駅

アルプス展望広場

道の駅美麻

北九州
 予備日のこの日はガイド本にあったアルプス展望広場とお土産買いとした。
 小川村にあるアルプス展望広場は八峰キレットの東に位置し、北の乗鞍岳から南の野口五郎岳まで見渡せるとあり、今回縦走した白馬岳から蓮華岳までのパノラマを期待して行った。生憎雲で山並みは全く見えなかったが、立派な看板で今回の縦走路を確認できた。おそらく後立山の稜線は晴れているんだろうけれど、30分待ったが雲は取れそうも無く引き上げた。
 
  アルプス展望広場の看板(携帯で撮影)
 

 道の駅美麻に立ち寄ったところ、地元のお年寄りたちが野菜や果物の直売所を開いていた。桃は小ぶりながら物凄く安い。青りんごやスイカ、新鮮な高原野菜などをたっぷり買って九州へのお土産ができ、帰途についた。


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